平成20年10月発行
 
  第79号
 

水道用次亜塩素酸ナトリウムの保管について

 平成20年4月より、水道法第4条第2項の規定に基づく水質基準に塩素酸が追加されました。また、これに伴って、水道施設の技術的基準を定める省令の一部も改正され、薬品基準の値も「0.6mg/L以下」から「0.4mg/L以下」に引き下げられました(ただし経過措置として、平成23年3月31日までの間は「0.5mg/L以下」となっています)。弊社では、水道水中の塩素酸濃度測定を行っておりますが、特に気温の高い夏の時期に高濃度の塩素酸が検出されるという傾向があります。そこで今回は、水道水中の塩素酸の起因物質である次亜塩素酸ナトリウムの適切な保管方法についてご案内致します。

次亜塩素酸ナトリウムと温度の関係
次亜塩素酸ナトリウムは、温度と密接な関係を持っています。
 *常温でも不安定な化合物で、徐々に自然分解する
 *日光、特に紫外線により分解が促進される
 *温度の上昇とともに分解率が増加する
☆ 次亜塩素酸ナトリウムの保管温度が高いと・・・
分解速度が速いため、有効塩素濃度が急激に減少し、
逆に、塩素酸濃度が急激に増加
有効塩素濃度が低いため、次亜塩素酸ナトリウムの
注入率が増加
し、水道水中の塩素酸濃度も増加

‹有効塩素濃度の経日変化※1›    ‹塩素酸濃度の経日変化※1
 
※1 社団法人 日本水道協会による
  「水道用次亜塩素酸ナトリウムの取扱い等の手引き(Q&A)」より抜粋

次亜塩素酸ナトリウムと温度の関係
  先述したように、次亜塩素酸ナトリウムは常温でも自然分解するため、その保管日数も水道水中の塩素酸濃度を決める大事な要素となります。
  右グラフは、保管温度20℃と30℃における最大塩素注入率と最長保管日数の関係をシミュレーションしたものです。このグラフから、塩素注入率を10mg/Lとする場合、薬品基準0.4mg/Lに適合するためには、保管温度を20℃とした上で納入後2週間以内程度の薬品を用いることが必要であることが分かります。(印参照)
☆ 水道水中の塩素酸濃度を
  低減するための対策

*塩素酸濃度の低い(高品質の)次亜塩素酸
  ナトリウムを使用する
*次亜塩素酸ナトリウムの保管温度を低温
  (20℃程度)に保つ
*1回あたりの購入量を少なくし、保管期間を
  短縮する
*保存容器(タンク等)を清潔に保つ

‹最長保管日数と最大塩素注入率の関係※2
塩素酸の薬品基準 0.4mg/L
納入時有効塩素 12.5%
納入時の次亜塩素酸ナトリウム中の塩素酸濃度 4000mg/L
比重 1.15
※2 厚生労働省健康局水道課による
    「水道施設の技術的基準を定める省令の改正
    (塩素酸の薬品基準)」の意見募集資料より抜粋

月刊東洋 第67号 にて、塩素酸にかかる水質基準等の設定についてご案内しております。あわせてご参照ください。 なお、何かご不明な点等ございましたら、担当営業までお問い合わせください。
by.Chika
株式会社 東洋環境分析センター 株式会社 東洋環境分析センター