食品検査

食材・食品の微生物検査 検査項目説明

検査項目 所要日数
一般生菌数 通常ある一定の条件下で発育する中温性好気性菌数のことで、食品の汚染の程度を示す代表的な指標。菌数の多少は、食品安全性、保存性、衛生的取扱の良否などを総合的に評価する際の有力な手段になる。細菌の多い食品は、一般的にその加工、製造、輸送、貯蔵などの過程で衛生的かつ適切な取扱がなされなかったり、温度管理が不適切であったことを示唆する。
大腸菌群 大腸菌群は自然界に広く分布することから、今日ではより良好な環境の下で、より安全性の高い良質の食品を生産し確保するのに必要な環境衛生管理上の尺度を示す汚染指標菌と考えられている。未加熱などの生の食品から少量の大腸菌群が検出されたとしても、衛生的にはあまり意味がないが、菌量が多ければ糞便などの不潔物による汚染を被っていることを疑わせ、病原菌汚染の可能性があり、清潔かつ安全でないことを示す。一方、加熱済み食品からの検出は不適当な加熱処理や加熱後の二次汚染などの取扱の悪さを示している。
耐熱性芽胞菌数 酸素を必要とする(好気性)耐熱型の芽胞を有する細菌はバチルス属菌で、食品の腐敗や品質劣化に関係する菌が多く、食中毒を起こすセレウス菌のような病原性の細菌も含まれる。土壌中に広く分布しており、芽胞は、加熱、乾燥、化学薬品等に強い抵抗性を示す。魚肉練り製品や食肉製品に添加される香辛料、デンプン、砂糖、植物性タンパク質等の粉末原料素材が汚染されている場合が多い。
乳酸菌数 糖類を発酵して多量の乳酸を生成する細菌の総称。土壌、植物、動物等の自然界に広く分布しており、生鮮食料品がなどが汚染される機会が多い。冷蔵庫などの低温pHが4.0前後の酸性域で増殖するものも多く、食品品質低下を起こす腐敗菌として知られる。
低温細菌 冷蔵庫内でも発育する菌群の総称。乳製品や畜肉、水産食品の品質劣化に関与し、食品の取り扱いの良否や品質劣化の度合いを示す指標となる。 低温細菌数の検出意義は、菌数が少ない場合は衛生的な取り扱いがなされた事を意味し、菌数の多い場合は、長く冷蔵されていた事を示す。
大腸菌 大腸菌(Esherichia coli)は大腸菌群と同様糞便あるいは腸管系病原菌の汚染指標菌として広く試用されている。大腸菌の存在は食品に糞便汚染があったとみなされ、サルモネラ菌等の腸管病原菌が存在する可能性がある。
糸状菌(カビ) 真菌は土壌、空中、水中に広く分布し、4979属、56360種に分類されている。カビ酵母以外にキノコの一部も含まれ、カビは糸状の細胞(菌糸)を伸ばして成長するため糸状菌とも呼ばれ、表面は毛羽立ったもしくはビロード状のコロニーを形成する。食中毒の原因となるのはマイコトキシン(カビ毒)であるが、食品の腐敗、変質による被害も大きな問題である。
酵母菌 真菌は土壌、空中、水中に広く分布し、4979属、56360種に分類されている。カビ酵母以外にキノコの一部も含まれ、酵母は細菌類に類似した単細胞状の形態を示し、細菌類に類似したコロニーを形成する。食中毒の原因となるのはマイコトキシン(カビ毒)であるが、食品の腐敗、変質による被害も大きな問題である。
セレウス菌 セレウス菌(Bacillus cereus)は、グラム陽性の桿菌で、好気性、体内に芽胞をもつ。本菌は土壌をはじめ、空気および河川水等の自然環境、農作物、水産物および畜産物などの食料、飼料等に広く分布する。特に穀類からの検出率が高い。本菌による食中毒は二つの病型に分けられる。感染型は潜伏時間が8~24時間、腸管内で増殖し下痢毒素(エンテロトキシン)を産生するため、下痢、腹痛を起こす。
クロストリジウム このクロストリジウム属菌は、グラム陽性の桿菌で、偏性嫌気性、体内に芽胞をもつ。本菌は河川、湖、海などの土壌中や、サカナや動物の腸管内に存在する。食肉や魚介類、生鮮農産物(野菜・果物)などは本菌に汚染される機会が多く、また加工等の加熱によって競合する微生物が死滅することや製品が嫌気状態になるためクロストリジウム属菌が増殖しやすい環境となる。
ウエルシュ菌 ウェルシュ菌(Clostridium perfringens)は、グラム陽性の桿菌で、偏性嫌気性、体内に芽胞をもつ。本菌は河川、湖、海などの土壌中や、サカナや動物の腸管内に存在し食品からも頻繁に検出される。ウェルシュ菌は感染型食中毒の原因菌で、加熱調理食肉や鶏肉、野菜、サカナなどが推定原因食品である。いずれも加熱後、室温で長時間放熱した場合、溶存酸素が少なくなった食品で生存していた芽胞が発芽し、栄養型菌の増殖が起り、大量生菌(106~107/g)の摂取は胃酸中でも生存し、腸管内で芽胞形成時にエンテロトキシンを産生すると考えられる。
ボツリヌス菌 河川、湖、海などの土壌中や、サカナや動物の腸管に存在する。毒素型食中毒の原因菌で、自家製食品による事例では、不適切な調理と保存、香辛料の乱用などが原因となる。

主な食中毒原因菌